風景スケッチの空間表現

風景スケッチは空間を表現しなければなりません。

が、風景スケッチに参加している人でも奥行きや広がりがうまく描けずに苦労しています。
これは多くの場合、建物や樹木、街灯など物だけ見て描いているために空間把握が難しくなっているのでしょう。

対象の物を見ないと風景スケッチは出来ませんが、その物一つ一つにとらわれていることが多く、空間(奥行きや広がり)が表現できません。

誰でも空間は描けるのですが皆様の頭には妙な観念で固まっているのでしょうか。素直に対象を見ることが出来なくなっているのです。
描けないのではなく見えていないのです。

ちょっと見ただけでわかったつもりになってあとは推測で描いているのです。

これは左脳で描いているためです。

そんなことない「わたしはちゃんと目を開けて見ている」という人もいます。
見えていれば、例え幼稚な描き方でも空間表現は出来ます。

どうして空間表現(奥行きや広がり)が出来ないかというと見方が違うのです。

絵は見方ですべてが変わってしまい、ただ漠然と対象を眺めていてもダメなのです。
絵のセンスが備わっている人は見方など教わらなくても描けるのです。


では、どのようにして見ればいいのでしょうか。
見方というのは描きたい物が在るとすれば、全体を見ると同時に、物と物の関係(つながり)も見るのです。

また、風景スケッチの場合特に、物の位置と地面の 関係をしっかりと見るのです。

が、多くのビギナーは描いている対象しか見ていないのです。

しかも勝手な推測なので空間は現れてこないのです。

 

例えば、窓が美しいから描こうとなるとその窓しか見ていないのです。

窓と建物の関係を見ていないのです。

そうするとどうなるかというと窓は窓で家とは関係 がなく描いているのです。

窓は見えますがその建物が見えてこないのです。

建物が在って窓が存在しうるので、まずは建物の存在が見えなくてはなりませんし、 窓と建物の大きさ(比例)が適切かどうかも見なければなりません。

さらに、その建物の位置が地面のどこにあるのか、現さなければなりません。

 

また、よくある例として、看板が描きやすいからと言って、看板ばかり描き、肝心のビルや建物に意識が回らないのか、建築物は弱くなっていることもあります。

このように物と物、物と地面、物と空の空間関係をしっかりと見なくてはなりません。

関係を見るというのは自分からの距離、比例(大きさの比較)、位置などを見るのです。
右のビル(建物)と左のビル(建物)の高さはどのようになっているか、チェックすることです。

その時、立ったり座ったりして目の位置を変えてはなりません。
どのようにチェックするのでしょうか。

それは基準となるところを決め、その点を基準にして調べます。

基準点を水平・垂直に移行し、その線が対象物のどこに位置するのか、見るのです。

空は空色、木は緑、幹は茶色、水は水色・・・・通俗的にしか認識されていません。

パターン化されるのが問題なのですね。

この概念でデッサンし、彩色してしまうからです。

 

屋根が見えないのに屋根を描いたりしていますね。

見えた通りに描くとなんだか変に見えるのじゃないかと心配するのでしょうね。

屋根瓦が見えないのであれば 描かないことです。

樹木もどういう訳かほうきのような形になってしまったり、串団子のように葉っぱを描いています。

 

色彩を置いても木の葉が緑に見えていなくても緑に塗ってしまっていますね。

これはすべて固定観念でものを見てパターン化しているからです。

つまり左脳(言葉の論理回路)で描いているのです。

絵の空間表現は右脳を使うのが一番です。

わかってしまえば何だ!

こんなことどうして今まで見えなかったのかとなるかと思いますね。

でもわからないうちは奥行きや広がりのある風景スケッチは描けなくて、物を描いてしまいますね。

古いイメージを払拭(ふっしょく)してよく観察すれば誰にも簡単にわかります。
空間を表現するコツは描く対象の物と地面の関係をよく観察することに尽きます。

また、構図では空間表現がしやすいように、手前の空間を十分とってやると比 較的簡単に表現できます。

目的の物だけを画面いっぱいに描いてはなりません。

また、双眼鏡で覗いたような構図にしても空間表現は厳しくなります。
鳥になったつもりで上空から眺め、建物、樹木、道路などの位置関係をしっかりと認識することです。

もう一つ大切なことはパース(透視図・遠近法)です。

このパースをマスターすることです。建物などはパースが狂っているとどうにもなりません。

特に女性は パースに弱いといわれていますのでしっかりと学ぶことです。

これが実践で活用できれば空間表現は完璧かと思います。

どのように学ぶかというと本で透視図の描き方を学ぶのです。

が、これがわかったとしても実際にはどうなっているのかサッパリわからなくなるのがパースです。

そこで自分が描いたところを写真に撮るのです。

絵と同じ構図で撮ります。

そうするとどこがおかしいのかすぐ判断できます。

写真はパースが極端に出ます ので誰にでもすぐわかります。
写真のパースと自分の絵のパースが狂っていないか、チェックすると簡単です。

それで何度か修正していけばそのうちカメラ(デジカメ)も不要となります。

次の「風景スケッチの空間表現」を参考にして下さい。

風景スケッチの空間表現

地面にポール(物)がA図のように立っています。これを上空から見るとB図のように見えます。
ポール(物)と地面の関係をよく見て描いている人はC図のようになり、空間表現が出来ます。
ポール(物)だけ見て描いている人はD図のようになり、空間表現が出来ません。
構図は目的の物だけ描くのではなく手前のアプローチ(広場、道路、野原などの導入)も描くことです。

地上からポールを見る。自分から遠くにあるポールは小さく見える。

地面の地平線は自分の目線。

A図を上空からみるとB図になる。

升目のようになっているが、地上から見るとA図のように見える。

左脳で見ているとD図のように考えてしまい奥行きは表現出来ない。

C図のように描く。
鉄道の電線とレールの関係をよく観察。

たとえばこんな感じに

(左)江ノ島の裏通り風景です。

(中)倉が面白いからといってその部分だけ描くと奥行きは出ない。臨場感も乏しくなる。

(右)道や民家を描いて導入部分を入れてやると、奥行きが出る。

(左)表参道のビューティサロンです。

(中)興味がわく部分だけでは雰囲気が出ない。奥行きも出ない。

(右)アプローチを入れると絵になる。奥行きも出る。